高級時計の代名詞として、世界中で多くのファンを魅了し続けるフランク ミュラー。では、その真の魅力とは何でしょうか? トノウ カーベックスの優美なケース、印象的なビザン数字、そして哲学的な複雑機構など数多くの特徴がありますが、正規販売店で20年以上フランク ミュラーの接客に携わってきた筆者は、「魅力は?」と問われれば以下の2つを挙げます。
①文字盤(ダイアル)作りにかける並外れた情熱
②哲学的な遊び心を込めた独自の機構
文字盤は、腕時計の「顔」とも言うべき存在です。本記事では、フランク ミュラーが最高級たる理由のひとつである「文字盤作りにかける情熱」について、現場を知るプロの目線から深く掘り下げて語ります。
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目次
フランク ミュラーと他ブランドにおける「文字盤の違い」
フランク ミュラーが文字盤にかける情熱と技術を紹介する前に、他ブランドとの決定的な違いについて解説します。
ラウンドケースとトノウ カーベックス
世の中に存在する腕時計の中で最もスタンダードな形状がラウンド(円)型です。ケースがラウンド型であれば、文字盤も円形になるのが時計界の定石です。一方、フランク ミュラーの主力モデルは、トノウ カーベックス(樽型)やロングアイランド(長方形)など、あえて非円形のフォルムを採用しています。
さらに特筆すべきは、これらのケースが「3次元曲線」と呼ばれる極めて複雑なカーブで構成されている点です。ケースやサファイアガラスだけでなく、内側に収まる文字盤自体も大きく湾曲しています。この大きく湾曲した文字盤に緻密な装飾を施すことは、平坦な文字盤の何倍もの工数と途方もない時間を要求するのです。
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ビザン数字のインデックス
フランク ミュラーの独自性は、1~12時を示すインデックスにも鮮明に現れています。アンティーク時計に着想を得て、フランク・ミュラー氏が独自の解釈で再構築した「ビザン数字」は、配置される位置や文字盤のカーブに合わせて、数字ごとのプロポーションが緻密に計算されています。形状やサイズが異なる80種類以上のケースに合わせて、それぞれ専用のビザン数字をデザインしているため、そのバリエーションは膨大な数にのぼります。
他ブランドと一線を画すフランク ミュラー 文字盤作りの秘技
フランク ミュラーにおいて、1枚の文字盤を完成させるためには150~200もの工程を要します。これほどの手間と時間をかけて製作しても、厳格な品質基準をクリアし製品に採用されるのはわずか2割から3割という徹底したこだわりには、時計界の常識を覆すほどの執念を感じます。
ここからは、文字盤製作工程において、他ブランドとは一線を画す特徴的な技術をご紹介します。
文字盤にギョーシェ模様を施すスタンピング

まずは文字盤のベースとなる真鍮プレートに、美しいギョーシェ模様の凸凹を刻むためスタンピング(プレス)を行います。この工程は1回で終わるものではありません。スタンピングと炉入れの作業を4回繰り返すことで、徐々に立体的で鮮明なギョーシェ模様が浮かび上がってくるのです。
トノウ型への打ち抜きと曲げ付け
ギョーシェ模様がくっきりと施されたプレートは、トノウ型などのケースに合わせた形状に打ち抜かれます。そして、ケースの3次元曲線に合わせた湾曲加工が施されます。
型の上に文字盤をセットし、表面の装飾を傷つけないよう薄いラバー板を被せ、プレス機としては比較的弱い「約2トン」の圧力でゆっくりと慎重に曲げを入れていきます。ここで使用するプレス機や緩衝材には複数のバリエーションがあり、文字盤の厚さや硬さによって最適なものを使い分けるという徹底ぶりです。

なお、フランク ミュラーの文字盤には「レリーフ」と呼ばれる印象的な仕様を採用したモデルがあります。これはインデックスを文字盤の裏側から打ち出して1~12の数字を隆起させる伝統的な手法です。金型でインデックスを打ち出す際に文字盤全体の曲げ加工も同時に行われるため、より立体的で力強いカーブが形成されます。
文字盤のカラーリング

文字盤のカラーリング工程には、塗装、ラッカー仕上げ、ザボンエナメル吹き付け、PVD加工など、文字盤ごとに最適な手法が採用されます。それぞれかなりの手間ひまがかかる作業で、例えばラッカー仕上げは一層吹き付けては45分乾燥させる工程を25回も繰り返すことで25層に仕上げるほどのこだわりです。

彩色が完了した文字盤には、上から保護用のクリアエナメルが20~40ミクロンという薄さで吹き付けられ、さらに140℃の恒温槽で8時間寝かせて溶剤を完全に飛ばします。これにより、長年の使用に耐えうる美しい光沢が生まれるのです。
ビザン数字インデックスのセッティングと手作業による彩色

一般的な植字インデックスでは、文字盤に固定するための「足」を後付けで溶接しますが、フランク ミュラーでは真鍮のブロックから足ごと削り出すという非常に難易度の高い手法を採用しています。

あえてこの難しいプロセスを選ぶのは、湾曲した文字盤の正確な位置に、寸分の狂いもなくインデックスをセッティングするためです。

さらに驚くべきは、一部モデルのインデックスの彩色が、熟練職人の手作業によって一つひとつ描かれている点です。

インデックスに豊かなボリューム感を出すため、表面張力を利用しながら塗料を幾重にも塗り重ねていく作業には、極めて高度な職人技が要求されます。
まとめ:熟練の技を腕元で楽しむ フランク ミュラーの文字盤
フランク ミュラーの文字盤には、現在3万種類以上のバリエーションが存在します。これだけの種類を持ちながら、その全てを最新のオートメーション機器に頼るのではなく、工程によってはあえて1950年代の古い機械を使用したり、途方もない手間のかかる手作業を採用し続けている点に、このブランドの真髄があります。
「時間を尊重しないと、良い文字盤は作れない」
この哲学が息づくフランク ミュラーの文字盤には、他のいかなるブランドにも似ていない唯一無二の個性(オーラ)が宿っています。フランク ミュラーをフランク ミュラーたらしめる文字盤作りの秘技には、熟練工による卓越した技術と、新旧の技術を融合させた妥協なき製造プロセスが欠かせないのです。
国内最大級の品揃えを誇るフランク ミュラー サロン「ブルージュ一真堂」では、今回ご紹介した文字盤に込められた技術の粋を、実際にお手にとってお確かめいただけます。ぜひ店頭で、ご自身の目で、フランク ミュラー ウォッチの圧倒的な魅力と情熱をご堪能ください。

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