【マニア向け】スーパールミノバ®︎ 夜光塗料から蓄光塗料までの歴史とその変遷

スーパールミノバ®︎が暗闇で優しく燐光している時計の油彩画

脅威の蓄光塗料・スーパールミノバ®︎。スーパールミノバ®︎は、ルミノバを用いて開発されたものです。19世紀後半まで、人々は暗闇の中で時間を知る術がありませんでした。蓄光塗料のイノベーションとともに、時計は発展してきたのです。このコンテンツでは、時計の歴史を別の面を通して触れていきたいと思います。見た目のデザインや機構に留まらず、見落としがちな蓄光塗料にまで長い歴史があります。

では、光の世界へご一緒に

光が燦々と降り注ぐ自然豊かな森 

まずはじめに 夜光と蓄光の違いを抑えよう

夜光は、ラジウムやトリチウムなどの放射性物質が蛍光物質に当たることによって、光が自発光します。放射性物質が、人体へ悪影響を及ぼすことが発見されてから使用されなくなった経緯があります。

夜光。ラジウムが自発光して有害なことがわかるイラスト、図

蓄光は、光エネルギーを蓄える蓄光材料が、太陽などの光エネルギーをまず吸収します。そして光に変換して放出することで発光するのです。人体へ害がないため、現代社会では蓄光が主流になっています。(参考元:Nitto https://marketing.nitto-lmaterials.com/column/luminous-comparison/)

ルミノバが蓄光する様を図で表したイラスト

蓄光塗料 スーパールミノバ®︎

化学室のイラスト

スーパールミノバ®︎とは蓄光塗料のこと。この蓄光塗料は、根本特殊科学(根本健三氏創業)が1993年に備蓄性夜光顔料を使用して「備蓄塗料」を発明し、これを元に開発したものです。1993年に発明された「備蓄塗料」を「N夜光(ルミノバ)」と言い、根本特殊科学が特許を取得。1998年スイス社の RC Tritec AG社と共同でLumiNova AG Switzerlandを設立しました。

電球と設計図のイラスト

LumiNova AG Switzerlandは、「スーパールミノバ®︎」の商標登録で、製造と販売を行なっています。根本特殊化学が発明した備蓄性顔料は画期的でした。放射性物質を含まない顔料だったのです。時計業界におけるイノベーションが根本特殊化学によってもたらされました。筆者は蓄光塗料が塗布されていない時計を使用することがありますが、街灯がないと当たり前ですが外出中は全く見えないです。

暗闇で時間を確認する人

夜光・蓄光塗料の変遷

19世紀後半までは、人々は真っ暗闇の中で時計の時間を確認することは容易にできませんでした。夜光塗料が発明されるまで、何世紀にもわたってイノベーションのプロセスの連続だったのです。1898年にラジウムが発見されてから世界は少しずつ変わり始めました。夜間でも人が時間を確認することができるようになりました。だが、ラジウムを使用した夜光塗料には問題もありました。

危険マークのイラスト

放射性物質の危険性があったため、規制を受け使用量が減少傾向にありました。ラジウムベースの塗料は、1960年代まで時計の文字盤や針に塗布されていました。(1910年代〜1960年代に製造されたヴィンテージウォッチに、この塗料が塗布されたものが見られます)1960年代から2000年代には、放射性の低いトリチウムやプロメチウムを含む夜光塗料が使用されるようになりました。

原則、トリチウムの文字盤には、6時位置に小さな “T” の文字が表示されています。文字盤が露出していたり、傷ついていない限り安全に使用できます。使用上間違いがなければリスクは低減できます。その後、先述の通り、スーパールミノバ®は1993年に開発されました。スーパールミノバ®︎ がもたらす快適さと安心感。この蓄光塗料は何世紀もの間、試行錯誤の連続だったのです。

蓄光塗料・スーパールミノバ® なぜ光るのか

スーパールミノバ® は放射性物質を含まない蓄光塗料です。この無毒の蓄光塗料が、文字盤や針やインデックスに塗布されているのですが、光を受けるとエネルギーの高い状態になります。(これを励起・れいきと言います。励起は原子や分子などが、光や熱などの外部からのエネルギーと衝突することによって、高いエネルギーの状態へ移行することを指します)

高いエネルギーの状態へ移行したルミノバが元の状態へ戻る際に、蓄えた自然光や人工光のエネルギーを放出します。このことによって発光するのです。このエネルギーが弱まると、明るさが低下してしまいます。なお、光にあたる時間の長さによって、ルミノバの発光度合いも変わります。スーパールミノバ®︎はさまざまな発光色が存在するのです。

一例を挙げると上の時計は、ベゼルの三角形のマーカー、分針、秒針の先端へ塗布されたスーパールミノバ®︎は青く燐光します。インデックスや時針などは緑色に発光します。(燐光・りんこうとは、光が当たっている間にエネルギーを蓄え、光が当たらなくなってからも蓄えたエネルギーを放出することによって発光することをいいます)

安心の蓄光塗料・スーパールミノバ®︎まとめ

優しく燐光する時計

わずか、塗料ひとつ取っても、これほどの歴史があります。数々の変革や新たな物質の発見があって、私たちの生活は豊かになってきたのです。今回、記したイノベーションの数々によって、人体に影響のない安心して使用できる蓄光塗料・スーパールミノバ®︎が発明されたのです。時計の発展とともに塗料も進化しているのは興味深いことです。

 

参考元

Nitto : https://marketing.nitto-lmaterials.com/column/luminous-comparison/

タグホイヤー:https://magazine.tagheuer.com/ja/2024/08/30/%E6%9A%97%E9%97%87%E3%81%AE%E4%B8%AD%E3%81%A7%E3%82%82%E6%99%82%E5%88%BB%E3%81%8C%E8%AA%AD%E3%81%BF%E5%8F%96%E3%82%8C%E3%82%8B%E7%A7%98%E5%AF%86%E3%81%A8%E3%81%AF/)