GMT機能の使い方を完全解説|腕時計選びが楽しくなる「プロの知識」

タグ・ホイヤーの腕時計 アクアレーサー プロフェッショナル300 GMTクロノグラフやデイト表示、パワーリザーブインジケーターなど、腕時計には男心をくすぐるさまざまな機能が存在します。中でも、有名時計ブランドがこぞってラインナップに加えるメジャーな機構、「GMT(ジーエムティー)」をご存じでしょうか。

本記事では「GMT機能」の基礎知識から便利な使い方、さらに一歩踏み込んだ玄人好みの選び方まで、時計業界で20年以上の経験を持つ筆者が詳しく解説します。

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GMT機能とは?

ブライトリング クロノマットGMT腕時計における「GMT」とは、第二時間帯、または第三時間帯を表示する機能のことです。平たく言えば「設定した海外の時刻を、一目で知ることができる機能」と言えます。

一般的なGMT搭載モデルは、通常の3針(時針、分針、秒針)に加え、24時間で1周する「GMT針」を備えた4本針のデザインが主流です。 では、実際の時計を例にGMT針の読み方を見てみましょう。

 

GMTの針の読み方、時差2時間のジャカルタ
例1:時差2時間のインドネシア ジャカルタ

ホームタイム(日本)がAM10時の場合、GMT針が指す第二時間帯(ジャカルタ)はAM8時と読み取れます。

 

GMT針の読み方 時差19時間のハワイ ホノルル
例2:時差19時間のハワイ ホノルル

ホームタイム(日本)は21時(PM9時)、第二時間帯(ホノルル)はAM2時を指しています。

GMT針はホームタイムと連動して進むため、あらかじめ時差を設定しておいた国(第二時間帯)の時刻をいつでも一目で確認できる、非常に実用的な機能です。

 ※本記事ではサマータイム(欧米などで採用されている、春から秋にかけて時計を1時間進める制度)は考慮せずに解説します。

GMT機能は必要?その魅力とは

ここまで読んで、「頻繁に海外へ行かない自分に、GMT機能は必要なのか?」と疑問に思われる方もいらっしゃるかもしれません。 そこで、実際にGMT搭載腕時計を愛用する筆者が考える「大人がGMTウォッチを持つべき理由」をまとめました。

・グローバルな繋がりをスマートにサポート オンラインで海外の人と話す男性SNSや通信ツールの進化によって、私たちは海外旅行中でなくとも、容易に世界中の人々とコンタクトが取れるようになりました。 ZoomやMeetなどのツールで海外の取引先と会議をしたり、オンラインゲームを通じて海外のプレイヤーと交流したりする機会も増えています。そんな時、相手国の時刻が手元で分かれば、「今は深夜だから連絡を控えよう」といった配慮ができ、不要なトラブルを回避できます。時差変換アプリも便利ですが、頻繁にやり取りをする相手であれば、腕時計に目を落とすだけで完結するスマートさは大きな魅力です。

 

・デザインの「格」を上げるアクセントカラー

ブライトリングの腕時計 ナビタイマー オートマチック GMT 41
ブライトリング ナビタイマー オートマチック GMT 41(A32310251B1P1)

 機能面もさることながら、多くのGMTモデルでは、GMT針にレッド、ブルー、オレンジなどの鮮やかなアクセントカラーが採用されています。これがデザイン上の「差し色」となり、ファッションアイテムとしての時計の存在感やステータス性を高めてくれます。

 

さまざまなデザインのGMTモデル

GMT機能は、ベゼルの有無や種類によってデザインや用途が異なります。代表的なスタイルをご紹介します。

GMT針 × 24時間目盛り(ベゼル表示なし)

グランドセイコーの腕時計 エレガンスコレクション
グランドセイコー エレガンスコレクション(SBGM221)

文字盤の内周や外周に24時間目盛りを配したタイプ。ベゼルがすっきりしているため、スーツスタイルにも合うスタイリッシュなデザインが魅力です。

【代表モデル】

ブライトリング「ナビタイマー オートマチック GMT 41」

グランドセイコー「エレガンスコレクション GMT」

 

GMT針 × 24時間目盛り(固定ベゼル表示あり)

グランドセイコーの腕時計 スポーツコレクション(SBGE253)
グランドセイコー スポーツコレクション(SBGE253)

ベゼル部分に24時間目盛りが刻まれたデザイン。ベゼル表示なしのタイプに比べ、よりスポーティーで計器らしい印象が際立ちます。

【代表モデル】

セイコー 「プロスペックス アルピニストGMT」

グランドセイコー 「スポーツコレクションGMT」

 

GMT針 × 逆回転防止ベゼル

セイコーの腕時計 プロスペックス ダイバーズ 1968 ヘリテージ GMT(SBEJ029)
セイコー プロスペックス ダイバーズ 1968 ヘリテージ GMT(SBEJ029)

GMT機能に加え、ダイバーズウォッチ特有の「逆回転防止ベゼル」を備えたデザイン。ここでは「経過時間の計測(潜水時間の管理)」を優先し、安全性のために逆回転防止機構を採用しています。

【代表モデル】

セイコー「プロスペックスダイバーズ 1968 ヘリテージ GMT」

ブライトリング「クロノマット オートマチック GMT 40」

 

GMT針 × 両方向回転ベゼル

ブライトリングの腕時計 アベンジャー オートマチック GMT 44(A32320101B1X1)
ブライトリング アベンジャー オートマチック GMT 44(A32320101B1X1)

GMT機能に特化した「両方向回転ベゼル」を備えたタイプ。潜水用の逆回転防止ベゼルとは異なり、第三時間帯を素早く確認するために、左右どちらにも回せる設計になっています。

【代表モデル】

タグ・ホイヤー「アクアレーサー プロフェッショナル300 GMT」

ブライトリング「アベンジャー オートマチック GMT」

 

 

GMT機能の便利な使い方(基本編)

まずは、GMT機能の基本的な活用法をご紹介します。 なお、ここからは以下の定義で解説を進めます。

・ホームタイム:普段住んでいる国の時間(日本時間)

・ローカルタイム:滞在している国の時間(現地時間)

国内にいながら、2か国目の時刻を把握するセイコーの腕時計アルピニストを操作している

海外の取引先や友人が住む国の時間にGMT針を設定します。スマホで検索せずとも、手元を見るだけで相手の時間を把握できます。

 

海外旅行時に、自国の時間を把握する

海外渡航時は、メインの時針を現地の時間(ローカルタイム)に合わせ、GMT針を日本時間(ホームタイム)のままにしておきます。ふとした時に「日本は今何時だろう?」と確認するのに役立ちます。

 

カレンダーの誤操作(故障)を防ぐ

機械式時計には、構造上「日付の早送り操作をしてはいけない時間帯(多くのモデルで午後8時〜午前4時頃)」が存在します。GMT針をホームタイム(24時間表示)に合わせておけば、現在がAMかPMかが一目で判別できるため、禁止時間帯にカレンダー操作をして故障させてしまうリスクを防ぐことができます。これは意外と知られていない、プロおすすめの活用法です。

 

GMT機能の便利な使い方(マニア編)

前述した「GMT針 × 両方向回転ベゼル」を持つモデルに限り、3か国の時刻(3タイムゾーン)を同時に知ることが可能です。

  1. メインの時針(1か国目)
  2. GMT針と文字盤内の24時間目盛り(2か国目)
  3. 回転ベゼルの目盛りを時差分ずらしてGMT針を読む(3か国目)

少々複雑ですが、使いこなせればまさに「プロの計器」として機能します。

 

GMT機能の一歩踏み込んだ選び方|「真のGMT」とは?

左:フライヤーGMT 右:コーラーGMT

ここからは、時計好きが一目置くマニアックな選び方をご紹介します。 実はGMTムーブメントには、操作方法の違いにより「フライヤーGMT」と「コーラーGMT」の2種類が存在します。その決定的な違いは「リューズを1段引いた時に、単独で動くのが『時針』か『GMT針』か」です。

・フライヤーGMT(トラベルGMT):時針(短針)が単独で動く

・コーラーGMT(オフィスGMT):GMT針が単独で動く

 

フライヤーGMT(トラベルGMT) 

グランドセイコーの腕時計SBGM245
グランドセイコー スポーツコレクション(SBGM245)

リューズ操作で「時針(短針)」を1時間単位で動かすタイプです。海外到着時、時計を止めずに時針だけを現地の時間(ローカルタイム)に合わせることができます。「フライヤー」の名の通り、頻繁に飛行機で移動する人に適しています。

 

コーラーGMT(オフィスGMT) 

セイコーの腕時計 プロスペックス ダイバーズ 1968 ヘリテージ GMT(SBEJ029)
セイコー プロスペックス ダイバーズ 1968 ヘリテージ GMT(SBEJ029)

リューズ操作で「GMT針」を動かすタイプです。ホームタイム(時針)は止めたまま、知りたい国の時間を自由に設定できるため、「日本にいながら海外の取引先の時間を知りたい」といった用途に便利です。電話(Call)をする際に相手の時間を気にする、という意味から「コーラーGMT」と呼ばれます。

 

時計愛好家が好むのは? 

グランドセイコー の腕時計 スポーツコレクションGMT愛好家の間では、「フライヤーGMTこそ、真のGMT(True GMT)」と語られることがあります。 GMT機能はもともと、航空会社のパイロットが国(タイムゾーン)をまたぐたびに、「時針」を現地時間に素早く合わせるために開発された経緯があるからです。そのため、本来の用途に忠実なフライヤーGMTは、別名「True GMT」や「トラベラーGMT」とも呼ばれ、高い評価を受けています。

 

現代人には「コーラーGMT」が合理的 

ブライトリングの腕時計 クロノマット オートマチック GMT 40
ブライトリング「クロノマット オートマチック GMT 40」

しかし筆者の所感としては、現代のライフスタイルにおいて「コーラーGMT」は非常に合理的だと感じています。 「年間、何度も国境を越える」という人は限られます。むしろ、国内にいながら海外とリモートで繋がることが日常化した現代では、GMT針を独立して操作できるコーラーGMT(オフィスGMT)のほうが、手軽で利便性が高いケースも多いのです。

 

フライヤーGMTとコーラーGMTの市場傾向 

フライヤーGMTとコーラーGMTの市場比較表市場全体を網羅したわけではありませんが、筆者の体感では「コーラーGMT」を採用しているモデルの方が多い印象です。汎用ムーブメントの普及といった製造コストの理由もありますが、私たちを取り巻く「環境の変化」や「実際の使い勝手」も、採用比率に影響しているのではないかと筆者は考えています。

 

GMTの基礎知識から踏み込んだ内容まで触れましたが、大切なのは「自分が愛着をもてる1本を見つけること」です。

「GMTのデザインにセンスを感じるから」「GMT機能がライフスタイルに合うから」「GMTの歴史を大事にしたいから」

どの選び方も正解です。ぜひ、自分の感性に合った1本を見つけてください。

 

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一般社団法人 日本時計輸入協会認定 CWC ウォッチ コーディネーター第5期 川口 和良
【当記事の監修者】
川口 和良
株式会社一真堂
ブルージュ一真堂 店長
一般社団法人 日本時計輸入協会認定 CWC ウォッチ コーディネーター第5期|2016年取得。
2005年(株)一真堂に入社。以来20年以上、時計販売や時計修理対応など、腕時計に関するさまざまな実務に携わる。

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