【フランク ミュラー】自社製ムーブメント「キャリバー1700」の真価|熟練時計師が紐解く9つの魅力

フランク ミュラーのムーブメント、CAL1702完全自社開発によって誕生したフランク ミュラーのマニュファクチュール・ムーブメント「Caliber(キャリバー)1700」。奇抜でユニークなコンプリケーションウォッチの印象が強い同ブランドにおいて、この手巻きキャリバーは一見すると控えめで、通好みな印象を抱くかもしれません。

世間では「7日間のロングパワーリザーブ」というスペックばかりが注目されがちですが、本機の真髄は「時を紡ぐ古典技術と先端技術の融合」というコンセプトにあります。

フランク ミュラーの自社ムーブメントを搭載したモデルの裏蓋

今回は、日本国内のテクニカルサービス部で第一線を張る熟練時計師の証言をもとに、他社とは一線を画す「キャリバー1700」の美学と構造を、愛好家も唸る9つの視点で深掘りして解説いたします。

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フランク ミュラーの自社ムーブメントに込められた伝統技法

フランク ミュラー氏
フランク・ミュラー氏

若き日のフランク・ミュラー氏が、アンティーク時計の修復を通じて培った至高の古典技術。そのエッセンスが、自社製「キャリバー1700」には余すところなく注ぎ込まれています。

コート・ド・ジュネーブで仕上げられたフィンガーブリッジ

フランク ミュラーの自社ムーブメントの特徴。フィンガーブリッジ歯車を支える軸受けには、一般的な一枚板の受け(ブリッジ)ではなく、独立した複数のパーツを用いる「フィンガーブリッジ」を採用しました。指を折り曲げたような優美な造形には、レマン湖のさざ波を彷彿とさせるコート・ド・ジュネーブ装飾が施されています。シースルーバックから覗く美感を飛躍的に高めるだけでなく、細部の不具合を瞬時に見抜けるなどメンテナンス性の向上にも寄与する実用的な設計です。

受け石を留めるゴールドシャトン

フランク ミュラーの自社ムーブメントの特徴。ゴールドシャトン「小さな器」を意味するシャトン。軸受けのルビーを直接地板に埋め込むのではなく、ゴールド製の台座(シャトン)を用いて固定するこの技法は、数百年前の懐中時計などで用いられていたものです。あえてこの古典的なシャトン留めを採用した背景には、時計の美しさを際立たせる伝統的な意匠を現代へと継承する、ブランドの強い意志が込められています。

ネジのブラックポリッシュ

フランク ミュラーの自社ムーブメントの特徴。ブラックポリッシュ通常のバフ研磨では、表面がゆるやかに丸くなり光が乱反射するため、金属表面は白っぽく輝きます。しかし、最高峰の仕上げとされる「ブラックポリッシュ」は、専用の台座で金属同士をすり合わせ、表面を完全な平滑(鏡面)に仕上げます。特定の角度から光を当てると、ネジの頭が深い漆黒に染まるのが特徴です。通常の研磨でも極めて美しい仕上がりですが、あえて究極の輝きを追求する姿勢に、マニュファクチュールの矜持が宿っています。

チラネジ付きテンプ

フランク ミュラーの自社ムーブメントに使用されているチラネジ付きテンプテンプ(テンワ)を構成する金属は、微視的に見れば密度が完全に均一ではありません。そこで、外周に極小の「チラネジ」を取り付けることで重さの偏りを調整し、完璧なバランスをとる古典技法を採用しました。このチラネジ自体がウェイトとしての役割も果たすため、テンプの慣性力が増し、時計の姿勢変化に左右されにくい安定した精度を実現しています。

自社製の巻き上げヒゲ

フランク ミュラーの自社ムーブメントに搭載されている巻き上げヒゲ時計の心臓部であるヒゲゼンマイを自社で製造できるスイスの時計メゾンは、現在でもごくわずかしか存在しません。近年は平ヒゲやシリコン製パーツが主流となり、職人の手作業が入り込む余地は減少しつつあります。しかしキャリバー1700では、職人が手作業でヒゲゼンマイの末端を立体的に持ち上げる「巻き上げヒゲ(ブレゲヒゲ)」の自社製造にこだわりました。これにより、姿勢差によって生じる精度のズレを劇的に抑え込んでいます。

ロービートで楽しむ動きと音の美感

フランク ミュラーのムーブメント時計業界全体でハイビート化が進む中、あえて毎時18,000振動というロービート(低振動)を選択したのには理由があります。それは、ハイビート機では味わえない「テンプがゆったりと往復する優雅な動き」を、肉眼でじっくりと堪能していただくためです。さらに、ロービート特有の郷愁を誘うような温かい刻音は、所有者の日常に豊かな時間をもたらします。精度というスペックだけにとらわれない、オールドムーブメントのような情緒的な喜びがここにあります。

自社ムーブメント内で古典技法と見事に融合したハイテクノロジー

フランク ミュラーの自社ムーブメントキャリバー1700を語る上で欠かせないのが、古典技術と双璧をなす最先端テクノロジーの存在です。

7日間のロングパワーリザーブを実現したツインバレル

フランク ミュラーの腕時計ヴァンガード 7デイズ パワーリザーブ スケルトンに搭載されたツインバレル ゼンマイを収める香箱(バレル)を2つ搭載し、約7日間ものロングパワーリザーブを確保する設計は、古典技術には見られない現代ならではのアプローチです。キャリバー1700では、この香箱を上下に重ねる「直列式ツインバレル」構造を採用しました。省スペース化に貢献するだけでなく、ムーブメントをスケルトン仕様にした際の立体的な美しさをも引き立てています。

最先端機械と職人の手作業によるオープンワーク

フランク ミュラーの腕時計 ヴァンガード 7デイズ パワーリザーブ スケルトン既存のムーブメントを後から肉抜きしていくのではなく、設計の初期段階から「魅せるオープンワーク(スケルトン)」を前提として構築されているのが特徴です。最先端の切削技術と職人の手作業を掛け合わせることで、堅牢な剛性を保ちながら、まるで立体建築のような深い奥行きを生み出しました。キャリバー1700系をベースに開発された「ヴァンガード 7デイズ パワーリザーブ スケルトン」などは、まさにこの新旧の技術が結実した唯一無二のタイムピースと言えます。

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美観と機能性を向上させるパーツの仕上げ

フランク ミュラーの自社ムーブメント、キャリバー1700の表面最新の精密機械と熟練の手作業を駆使して施されるパーツ表面の装飾や研磨。これは、単に外観を美しく見せるためだけのものではありません。徹底的に磨き上げることによってパーツ同士の摩耗抵抗が減少し、耐食性も大きく向上します。さらには、将来的な分解・組み立て作業をスムーズにするなど、長期的なメンテナンス性を見据えた機能的な意味合いも強く持っているのです。

まとめ|フランク ミュラー自社ムーブメントがもつ機械式時計の真価

フランク ミュラーの腕時計に搭載された自社ムーブメント、キャリバー1700系フランク ミュラーの自社開発ムーブメント「キャリバー1700」の9つの魅力をあらためてまとめます。

  1. コート・ド・ジュネーブで仕上げられたフィンガーブリッジ
  2. 受け石を留めるゴールドシャトン
  3. ネジのブラックポリッシュ
  4. チラネジ付きテンプ
  5. 自社製の巻き上げヒゲ
  6. ロービートで楽しむ動きと音の美感
  7. 7日間のロングパワーリザーブを実現したツインバレル
  8. 最先端機械と職人の手作業によるオープンワーク
  9. 美観と機能性を向上させるパーツの仕上げ

フランク ミュラーは、この「キャリバー1700」を「永遠に動き続ける時計」と称しています。それは決して、ゼンマイを巻かなくても永遠に稼働する永久機関を意味する言葉ではありません。

「適切なメンテナンスを継続し、次の世代へと引き継いでいくことで、数百年先まで命を吹き込み続けることができる」という信念の表れです。

フランク ミュラーの自社ムーブメント、キャリバー1700

フランク・ミュラー氏自身が敬愛し、自分の時計作りの基盤となった古典技法を、未来へと手渡していくこと。大量生産される現代の工業製品とは根本から異なる、世代を超えて時を刻み続ける本物のタイムピースとしての価値が、このキャリバー1700には宿っています。

国内トップクラスのラインナップを誇るフランク ミュラー サロン「一真堂」で、キャリバー1700に込められた永遠に受け継がれる機械式時計の真価を、ぜひお手に取ってご体感ください。

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一般社団法人 日本時計輸入協会認定 CWC ウォッチ コーディネーター第5期 川口 和良
【当記事の監修者】
川口 和良
株式会社一真堂
ブルージュ一真堂 店長
一般社団法人 日本時計輸入協会認定 CWC ウォッチ コーディネーター第5期|2016年取得。
2005年(株)一真堂に入社。以来20年以上、時計販売や時計修理対応など、腕時計に関するさまざまな実務に携わる。

一真堂ブルージュ店外観

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